nanaに「いい音」でアップしたい! 第2回 アコースティック・ギター編

Jan 18, 2016

※この記事は、2016年1月18日に公開されたものを転記したものです。
※本記事は最新バージョンとは一部画面や機能が異なることがあります。ご了承ください。
※音楽メディアBARKSに連載している、音楽制作機器ブランドTASCAM×音楽アプリnana のコラボ記事です。

——

歌声や楽器演奏をカンタンに録音&シェアできるアプリ「nana」(ナナ)。スマホ本体の内蔵マイクで録音&投稿できるはカンタンでいいんだけど、もっと「いい音」で録音したい! そんな悩みを解決する特集の第2回。

第1回ではnanaの使い方と、マイク録音の基本としてボーカルを取り上げたが、続いてのテーマはギター。第2回となる今回はアコースティック・ギター(アコギ)の録音方法についてチェックする。なお、nanaアプリはiOS版とAndroid版があり仕様が異なるが、本特集ではiOS版を使っている。

昨今の「ギター女子」ブームもあってか、nanaでもアコギの投稿は非常に多い。自身のボーカルでの弾き語りはもちろん、ギターをじっくり聴かせるソロギター演奏もある。そして、ボーカリストとコラボするための伴奏を積極的にアップしている人もいる。それぞれのやり方でnanaを楽しんでいるというわけだ。

オーディオインターフェイス+マイクで音質アップ

アコギを「いい音」で録る方法は、基本的に前回のボーカルと同じ。iPhone/iPad/iPod touchの内蔵マイクやイヤホンマイクではなく、ボーカル用や楽器用として売られているマイクを使うことだ。こうしたマイクはiPhone/iPadに直接つなぐことはできないので、オーディオインターフェイスが必要になる。

というわけで用意したのが、ティアックのTASCAMブランドから発売されている「iXZ」という製品。価格は5,000〜6,000円。マイクでの録音はもちろん、ギターもシールドケーブル1本で接続可能、キーボードなどのラインレベルの楽器にも対応するので、さまざまな録音が試せる。小さいながらもかなり使えるヤツなのだ。

▶︎iXZ製品サイトへ

画像1

▲TASCAMのiOSデバイス用マイク/ギターインターフェイス「iXZ」。iPhoneのマイク/イヤホン端子に接続して、マイクやギターの接続を可能にする。iOSとの接続ケーブルは直付け、コネクタは4極ミニプラグだ。

画像2

▲前面にあるのはマイク&ギター/ライン入力用コンボジャックと入力切り替えのMODEスイッチ、ファンタム電源用スイッチ、INPUTボリューム。裏側にはヘッドホン/ライン出力端子がある(ステレオミニジャック)。iXZのロゴがある上面のランプはマイクプリアンプ使用時に緑に点灯する。

オーディオインターフェイス「iXZ」につなぐマイクは、ダイナミックマイク、コンデンサーマイクのどちらでもOK(両者の違いについては第1回を参照)。初めてマイクを購入するのならオススメは扱いやすく価格も手頃なダイナミックマイク(数千円で購入できる)。バンドマンの友達がいるなら、まずはそれを借りて試してみるのもいいだろう。

画像3

▲「TG V30d s」はノイズレスのON/OFFスイッチを搭載。パッケージにはマイク本体に加え、4.5mのマイクケーブル(XLR-XLR)、マイクスタンドに取り付けるための汎用マイククランプ、ソフトケースが付属。ケーブルも単体で買うとけっこうな額なので、付属するのはうれしい。

注意が必要なのは、「iXZ」に接続するマイクケーブルのコネクタがXLR端子(キャノン端子とも呼ばれる)でなければならないということ。マイクのケーブルがフォーン端子の場合は、別途XLR端子のケーブルが必要となる。今回用意した独beyerynamic社のダイナミックマイク「TG V30d s」(5,000円前後)はXLRケーブルが付属するので、そのまま「iXZ」に接続可能だ。

アコギの録音は角度が大事!

と、ここまではボーカルと同じ。アコギの録音ではさらに揃えたいものがある。それはマイクと固定するマイクスタンドだ。

ボーカルの録音ならマイクは手で持てばいい。しかし、ギターの演奏中は両手がふさがっている。なんらかの方法でマイクをギターに向けなくてはならない。机の上にでも転がしておけばいいと思う人もいるかもしれないが、それはNG。ボーカル用マイクや楽器用マイクは、録音対象との距離、向きによって音が大きく変わる。中でもアコギの録音はマイクセッティングに非常にシビア。ちょっとした角度の違いが、録り音に影響を与えてしまうのだ。さらなる出費になるが、ぜひ用意しておきたい。

自由な角度にセッティングできるブームマイクスタンドなら3千円台から購入できるし、卓上型マイクスタンドなら千円台からある。さらに安く抑えたいなら、カメラ用三脚を流用するというテもある。マイクスタンドは持ってないけど、カメラ用三脚は複数持っているという人も多いはず。

マイクスタンドとカメラ用三脚のネジ径は異なるのだが、マイクホルダーをカメラ用三脚に取付可能にする変換ネジというのが数百円で購入できる(ただ店頭ではあまり見かけないので、ネット通販を利用することになるだろう)。

画像4

▲写真左の中央が1/4インチのカメラ用三脚にマイクホルダーを接続するための変換ネジ。今回使用したマイクTG V30d s付属のマイクホルダーのネジ径は3/8インチなので、それに合った変換ネジを使用。マイクホルダーはこのほか5/8インチ径のものなどがある。写真右はカメラ用三脚−変換ネジ−マイクホルダーを接続した状態。

意外と知らない(?)マイクの向き

必要なものが揃ったところでセッティングを開始。ケーブル類の接続はボーカルとまったく同じ。「iXZ」はiOSデバイスのイヤホン/マイク端子へ接続する。「iXZ」のMODEスイッチをマイクに切り替えること、ヘッドホンの接続もお忘れなく。

画像5

▲iOSデバイスのイヤホン/マイク端子にiXZを接続。iXZにXLR端子でマイクケーブルを接続。マイク録音ではスピーカーは使えない(ハウリングしてしまう)ので、ヘッドホンで音を聴きながら録音する。INPUTボリュームでマイク入力のレベルが調整できる。

さて、ここで重要なのがマイクのセッティング。「マイクはアコギのサウンドホールに向ければいいんでしょ」と思いがちだが、これでは低音がふくらんだ、いかにもしまりのない音になってしまう。狙うのはサウンドホールを外して、ボディのネック寄りをねらうのが定石。距離は20cmといったところだ。ベストなセッティングはプレイスタイルや使用楽器・器材によっても変わってくるが、まずはこのあたりから始めて自分好みのサウンドになるマイクの向き、距離を探してみよう。今回使用したマイクはiPhone内蔵マイクと異なり狭指向性なので、周囲の余計な音はほぼ入らない。1時間も試行錯誤すればアコギの音をダイレクトに捉えた「いい音」が録れるはずだ。

画像6

アコギ録音の小技

さて、ここからは録音の達人から仕入れた小技をいくつか紹介。まず、マイクセッティング時はnanaアプリの録音画面で有効になるリアルタイムモニター機能を使うのもいいが、いったん録音した音を聴く方がいい。これはギターから耳に直接届く音ではなく、録音された音だけをチェックするためだ(公開される音は後者だ)。ただし、nanaアプリの録音は90秒までという制限がある。ここは別途録音できるアプリを使用したほうが効率がいい。マイクのセッティングを変えるたびに「30cm離した」「向きを右に10cmずらした」などと口で言いながらギターを録音していけば、チェック時に「この音のセッティングはどうだったっけ?」と迷うことはなくなる。

レベル調整はボーカル同様、「歪まない範囲でなるべく大きい音」が基本。ただ、コラボ用の伴奏とする場合は、少々レベルを抑えてあったほうがボーカルなどを重ねる際に録音しやすいようだ。自分の投稿に自分でコラボ録音して音を重ねると、このあたりの感覚がつかめてくる。

コラボのテストには「シークレット投稿」が便利だ。投稿時に設定できる項目で、これをONにするとフィードやプロフィール、検索結果で他のユーザーから見えなくなる。いろいろテストするにはもってこいの機能だ。

弾き語りを録りたい、アコギといっしょにボーカルも録音したいという場合は、マイクと演奏者との距離をとり、遠目から狙うことになる。角度の調整は一方だけを録るよりもちょっと面倒だ。バランスを取るために、歌い方や演奏方法も変えなくてはならないかもしれない。

そこで同時録音はあきらめて、ギターを録音&投稿、それにコラボ録音でボーカルを重ねるという方法もオススメしたい。nanaアプリによる多重録音だ。実際、この方法で擬似弾き語り曲を仕上げている人も多い。同じ伴奏を使った自分の歌と、他のユーザーのコラボを比べられるのもおもしろい。このへんもnanaならではの楽しみ方だろう。

また、この方法を試しているうちに、コラボ用の伴奏の音がどうあるべきかも、自分の体験でわかるようになる。いろいろ試して、さらなる音質アップを目指そう。

読み物/コラム